海外のサイバーセキュリティ認証規格と対応方法
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セキュリティ認証
コラム
はじめに
現代のビジネス環境では、サイバー攻撃の脅威がますます高まり、各国・各業界で厳格なセキュリティ認証規格が求められています。特に海外市場でビジネスを展開する企業にとって、サイバーセキュリティの認証取得は重要な課題です。本コラムでは、主要な海外のサイバーセキュリティ認証規格の種類と、それに対応するためのプロセスについて解説いたします。
主要な海外のサイバーセキュリティ認証規格
国際的なサイバーセキュリティ規格
- ISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステム:ISMS)
- 情報セキュリティ管理の国際標準。
- 組織全体のリスクマネジメントを適用。
- ISO/IEC 27017(クラウドセキュリティ管理策)
- クラウド環境向けの追加セキュリティ管理策。
- ISO/IEC 27018(クラウド個人データ保護)
- クラウド上での個人データ保護指針。
- Common Criteria(ISO/IEC 15408)
- IT製品のセキュリティ評価の国際基準。
米国のサイバーセキュリティ規格
- NIST Cybersecurity Framework(NIST CSF)
- 米国国立標準技術研究所(NIST)が策定したサイバーセキュリティフレームワーク。
- FedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)
- 米国政府向けクラウドサービスのセキュリティ基準。
- CMMC(Cybersecurity Maturity Model Certification)
- 米国防総省(DoD)契約企業向けのサイバーセキュリティ成熟度モデル。
- FIPS 140-3(暗号モジュール認証)
- 政府機関および関連企業向けの暗号規格。
欧州のサイバーセキュリティ規格
- GDPR(General Data Protection Regulation)
- EU一般データ保護規則。企業に厳格なデータ管理を要求。
- EU Cybersecurity Act
- ENISA(欧州サイバーセキュリティ庁)が推進する認証枠組み。
- BSI IT-Grundschutz(ドイツ)
- ドイツの国家情報セキュリティ基準。
業界特化型の認証規格
- PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)
- クレジットカード取引に関するデータセキュリティ基準。
- SWIFT CSP(Customer Security Program)
- 国際銀行間送金のセキュリティ基準。
- IEC 62443(産業用制御システム向け)
- 重要インフラ・製造業向けのサイバーセキュリティ基準。
認証取得のプロセスと対応策
(1) 現状分析とギャップ分析
- 取得を目指す認証規格を選定。
- 既存のセキュリティ対策を評価し、不足部分を特定。
(2) 体制構築とポリシー策定
- セキュリティ管理体制を整備し、責任者を明確化。
- 内部ポリシーや手順を文書化。
(3) 技術的な対策の実施
- ネットワーク、エンドポイント、クラウドなどのセキュリティ強化。
- 暗号化、アクセス管理、脅威検出ツールの導入。
(4) 教育・トレーニングの実施
- 社員向けのサイバーセキュリティ研修を実施。
- インシデント対応訓練を行い、即応力を向上。
(5) 内部監査と外部監査の実施
- 定期的に内部監査を行い、コンプライアンスを確認。
- 認証取得のための第三者監査を受け、認証を取得。
(6) 継続的な改善
- セキュリティインシデントや新たな脅威に対応。
- 規格の更新に応じた対策の継続。
認証取得のメリット
- 海外市場での信頼獲得:国際的な取引や政府契約の要件に対応。
- サイバー攻撃リスクの軽減:強固なセキュリティ対策により被害を防止。
- 競争優位性の確保:他社との差別化要因となり、ビジネス拡大につながる。
- コンプライアンス対応の効率化:各国の規制に適合しやすくなる。
今後法規制が予定されている海外のサイバーセキュリティ認証規格と対応策
主要な海外の新規サイバーセキュリティ法規制と対応時期
(1) 欧州サイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act, CRA)
- 概要: CRAは、デジタル要素を含む製品(IoTデバイス、ソフトウェアなど)のサイバーセキュリティ強化を目的としたEUの新規制。
- 適用開始時期:
- 2024年12月10日: 発効
- 2026年9月11日: 一部義務適用開始
- 2027年12月11日: 全面適用
- 対応策:
- CRA適用対象製品の洗い出しとリスク評価
- サイバーセキュリティ要件(脆弱性管理、更新義務など)への準拠
- EU市場向け製品の開発・販売計画の見直し
(2) 無線機器指令(Radio Equipment Directive, RED)のサイバーセキュリティ要件
- 概要: REDはEUの無線機器向け規制で、サイバーセキュリティ要件(データ保護、ユーザー認証、不正アクセス防止)を強化。
- 適用開始時期: 2025年8月1日(当初の2024年8月1日から延期)
- 対応策:
- 対象機器の技術仕様の見直し
- EU市場での販売継続に向けた適合性評価と認証取得
- GDPRやCRAと整合性のあるセキュリティ対策の実装
(3) EUサイバーセキュリティ認証制度(EU Cybersecurity Certification, EUCC)
- 概要: ICT製品のセキュリティ評価に関する共通基準(ISO/IEC 15408)に基づく新たなEU認証スキーム。
- 適用開始時期: 2025年以降(詳細な開始時期は未確定)
- 対応策:
- EUCC対象製品の特定と適合計画の策定
- ISO/IEC 15408認証プロセスの理解と準備
- ENISA(欧州サイバーセキュリティ庁)による最新情報の追跡
(4) 米国国家サイバーセキュリティ戦略(National Cybersecurity Strategy)
- 概要: 米国政府が発表した国家戦略で、サプライチェーンセキュリティやソフトウェア開発のセキュリティ基準の強化を含む。
- 適用開始時期: 2023年以降段階的に実施中
- 対応策:
- 米国政府および関連業界のセキュリティ要件を確認
- ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)へのセキュリティ組み込み
- NISTフレームワーク(NIST CSF 2.0など)への準拠
企業の対応戦略
(1) 規制対象の特定と適合計画の策定
- 各規制が適用される製品・サービスのリストアップ
- 自社のセキュリティ対策と規制要件のギャップ分析
(2) サイバーセキュリティ強化のための技術対策
- 安全なソフトウェア開発手法の導入(例: DevSecOps)
- クラウド・IoT・エンドポイントのセキュリティ管理強化
- 定期的な脆弱性診断とパッチ管理の徹底
(3) 認証取得プロセスの構築
- ISO/IEC 27001、ISO/IEC 15408、NIST CSFなどの標準に基づく内部管理体制の確立
- サードパーティ監査を活用し、適合性の確認
(4) 規制動向の継続的モニタリング
- EUや米国の政府機関の公式発表を定期的にチェック
- 業界団体や専門家とのネットワークを活用し、最新情報を収集
- 柔軟に対応できる体制を確保
まとめ
今後数年間で、EUや米国を中心にサイバーセキュリティに関する新たな法規制が本格的に適用されます。企業は、規制対象の特定、技術的対策の強化、認証取得プロセスの確立、そして継続的なモニタリングを通じて、規制対応をスムーズに進める必要があります。特に、欧州のCyber Resilience Act(CRA)や米国の国家サイバーセキュリティ戦略は、広範な影響を及ぼすため、早急な対応が求められます。
グローバル市場での競争力を維持するためにも、各国の法規制に適合するセキュリティ基準を満たし、信頼性の高い製品・サービスを提供することが不可欠です。
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