Linuxの脆弱性を対策!被害事例と今すぐできる方法を解説
多くの企業で利用されているLinuxは、一般的に安全といわれています。しかし、システムの設計ミスや運用の不備によって脆弱性が生まれ、情報漏洩やサービス停止と言った被害を引き起こす可能性も少なくありません。
脆弱性とは、システムやソフトウェアに存在しているセキュリティ上の欠陥を指します。(※)
そのため、脆弱性は早期発見と早期対策が重要といえるでしょう。
この記事では、Linuxの脆弱性についての基本から、実際の被害事例、今すぐ実践できる対策などを分かりやすく解説します。
※出典:総務省「脆弱性とは?」
Linuxの脆弱性とは何か
Linuxは高い安定性と信頼性があり広く利用されていますが、脆弱性が存在しているのも事実です。ここでは、Linuxに潜む脆弱性について、その定義や種類、原因を分かりやすく解説します。
脆弱性の定義とセキュリティ上のリスク
脆弱性とは、ソフトウェアやシステムに存在するセキュリティ上の欠陥です。この欠陥が悪用されると、第三者による不正アクセスや情報漏洩の原因になります。
例えば、認証をすり抜けるコードの記述ミスや、古いライブラリを使用している場合などです。脆弱性を放置すると、攻撃者に侵入のきっかけを与えてしまうため、脆弱性の早期発見と適切な対策がシステムの安全を守る鍵となります。
Linuxにおける主な脆弱性の種類
Linuxで多く見られる主な脆弱性は、権限昇格、バッファオーバーフロー、サービス妨害です。下表に主な脆弱性の種類をまとめました。
脆弱性の種類 | 説明 |
権限昇格 | 一般ユーザーの操作権限が、管理者レベルの権限を得てしまう状態です。 |
バッファオーバーフロー | 過剰なデータがメモリ領域を上書きし、不正なコードを実行してしまいます。 |
サービス妨害(DoS攻撃) | DoS攻撃はシステムを過負荷状態にして、正常なサービスを妨げます。 |
これらは古いカーネルやソフトウェアを利用している場合、簡単に成功してしまいます。脆弱性の種類を理解し、事前の対策が重要といえるでしょう。
脆弱性が生まれる原因とは
Linuxの脆弱性が生まれる主な原因には、次のものがあります。
- ソフトウェアの設計ミスや実装ミス
- 開発時に十分なテストが行われていない
- オープンソースのためコードの公開範囲が広く、攻撃者が問題点を見つけやすい
- 長期間アップデートされていない
- 古いパッケージを使用している
- 管理者側の設定ミスや脆弱性情報を把握していない
このように技術的な問題だけでなく、運用面の甘さも脆弱性を生む原因となります。これらの原因を理解することで、予防の精度を高めることが可能となるでしょう。
Linux脆弱性による被害事例
Linuxシステムに脆弱性がある場合、情報漏洩やサービス停止、企業の信頼失墜といった重大な被害を招く可能性があります。ここでは、代表的な事例を紹介します。
システム侵害による情報漏洩
Linuxサーバーの脆弱性を突かれ、顧客情報や社内資料が不正に取得されることがあります。2024年に報告された「CVE-2024-6387」は、OpenSSHに関する脆弱性で、リモートからroot権限を奪取されるリスクです。(※)
この問題により外部からの第三者の侵入を許してしまうため、企業内の機密情報や個人情報が流出してしまう可能性があります。
※出典:MITRE社「CVE-2024-6387」
サービス停止・業務への影響
「CVE-2021-3156(sudoのヒープバグ)」は、特権昇格に悪用される脆弱性として知られています。(※)
この脆弱性によってローカルユーザーがrootに権限昇格してしまう可能性があるため、悪用されるとシステムに重大な影響を及ぼします。その結果、企業のサービス停止や物流・販売システムの停止など、業務に大きな損害が出てしまう要因となるでしょう。
※出典:MITRE社「CVE-2021-3156」
企業ブランドの信頼失墜
Linuxで利用されているファイル圧縮ツールの「XZ Utils」に悪意のあるコードが挿入されていました。2024年に「CVE-2024-3094」として報告されています。(※)
特定の条件が整うと、外部から攻撃者がSSHポート経由で接続できるようになる問題です。Linuxパッケージに「XZ Utils」を含めている場合、配布元の企業が攻撃経路を組み込んでいることになるため、企業の信頼を失墜させる要因となります。
※出典:MITRE社「CVE-2024-3094」
Linux脆弱性をチェックし対策する方法
脆弱性は早期発見と迅速な対処が重要です。ここでは、脆弱性を調べる方法と、チェック後の基本的な対策方法を解説します。
脆弱性情報の確認手段
Linux脆弱性を調べる際は、信頼性の高い情報源から最新の情報を得ることが重要です。国内ではIPAとJPCERTが運営するJVN(Japan Vulnerability Notes)があり、企業向けに脆弱性情報を提供しています。(※)
海外サイトでは、米国NISTのNVD(National Vulnerability Database)です。(※)
NVDでは、世界中の脆弱性情報をCVE番号(共通脆弱性識別子)付きで掲載しています。自社で使用しているソフトウェアやカーネルのCVE番号を検索し、影響範囲や深刻度を確認することで、優先的に対応すべき脆弱性が明確になります。
※出典:JVN(Japan Vulnerability Notes)「脆弱性関連情報と対策情報」
NIST「国家脆弱性データベース」
自動スキャンツールの活用
自社のLinuxサーバーに脆弱性がないかどうかを自動的にチェックする方法として、スキャンツールの活用が有効です。代表的なものに「OpenVAS」や「Lynis」があり、いずれもオープンソースで利用できます。(※)
OpenVASは、ネットワーク経由で多様な脆弱性を検出し、レポートを生成します。Lynisは、コマンドラインで実行し、システム構成やパーミッション、パッケージの状態を総合的に診断可能です。いずれも継続的な運用を前提とし、定期的にレポートを確認することで脆弱性の見落としを防げます。
※出典:Greenbone Networks GmbH「OpenVAS」
CISOFY「Lynis」
定期的なパッチ適用・アップデートの徹底
脆弱性対策でもっとも基本的で確実なのが、セキュリティパッチの適用です。Linuxを使用するための環境を一つにパッケージングしたものを「Linuxディストリビューション」と呼びます。
「Red Hat」「Ubuntu」などのLinuxディストリビューションでは、脆弱性が発見されると対応パッチが随時提供される形です。特に深刻な脆弱性に関しては、緊急アップデートとして配信されることもあるため、随時適用することが重要となります。運用中のサーバーなど、すぐに適用が難しい場合は、適切なスケジュールと手順のもとで継続的にアップデートを行える体制づくりが大切です。
Linux脆弱性対策の強化
組み込みLinuxの脆弱性対策を包括的に実施するには、Wind River Linux Servicesがおすすめです。脆弱性を検出するCVEスキャンから長期保守まで、企業が直面する不安に応える施策が可能となっています。
CVE対応と長期サポートで脆弱性リスクを低減する
Wind Riverは、SBOM(Software Bill of Materials)やプラットフォームマニフェストを分析し、組み込みLinux環境に存在するCVEを自動検出します。またシステムの影響度の判定も可能です。これにより技術的な欠陥が解消され、リスクを抑えつつ長期にわたるサポートが可能となります。継続的な対応体制を整えることで、製品ライフサイクル全体の安全性を確保できます。
セキュアブートと署名済みパッケージで信頼性を確保する
Wind River Linux Servicesは、セキュアブートとデジタル署名によって、ブート時の改ざん防止を実現します。これにより、マルウェアなどの不正なプログラムの起動を事前に防ぐ仕組みです。デジタル署名にはキー管理体制が不可欠となっており、Wind Riverでは設計や運用を支援します。組み込みLinux製品では、信頼できる起動の構築が製品信頼性の基盤となります。
Yocto Projectベースの管理性と更新性を生かす
Wind River Linux Servicesは、Yocto Projectベースのディストリビューションを使用し、高度なカスタマイズ性と安定した更新機能を両立しています。開発後の更新機能や継続的な脆弱性対策、コンプライアンス文書、高品質なボードサポートパッケージなどです。
まとめ
Linuxは高い信頼性がある一方で、設計や運用の不備により脆弱性が発生するリスクもあります。実際に情報漏洩やサービス停止などの被害事例も報告されており、定期的な脆弱性チェックとパッチ適用が不可欠です。
JVNやNVDによる脆弱性の情報収集、自動スキャンツールの活用に加え、Wind River Linux Servicesを活用したCVE対応や長期サポートの導入も有効です。Linux脆弱性対策は、技術面と運用面の両面から取り組む必要があります。
弊社のWind River Linux Servicesを利用することで、システム全体のセキュリティを継続的に維持することが可能です。
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[2025年08月06日 時点]