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Linuxのセキュリティ完全ガイド|脆弱性と対策を網羅的に解説

セキュリティ認証 コラム 特集

Linuxは高い安定性と柔軟性から、多くのシステムに採用されています。しかし、安全といわれているLinuxでも、現代の巧妙なサイバー攻撃に完璧に対応できるわけではありません。実際Linuxは、脆弱性やマルウェアの脅威にさらされており、適切なセキュリティ対策が必要です。

この記事では、Linuxの脆弱性管理・アクセス制御・マルウェア対策など、セキュリティの観点から必須ポイントを網羅的に解説します。

またSELinuxやAppArmorといった高度な機能や、CVE対応の運用フロー、商用サポートの活用など、より安全にLinuxシステムを運用するための実践方法を紹介します。

 

目次

Linuxセキュリティの基本:脆弱性とは何か

Linuxは高い信頼性と柔軟性があるため、多くのシステムで採用されています。しかし、攻撃者に狙われる脆弱性が存在しているのも事実です。ここでは、Linuxにおけるセキュリティの考え方と、代表的な脆弱性、攻撃者の手口について解説します。

 

Linuxのセキュリティとは?基本構造と強み

Linuxのセキュリティは、ユーザー権限の分離、アクセス制御、オープンソースとしての透明性を軸に構成されています。通常ユーザーは、システム全体にはアクセスできず、操作も制限されているため、不正な行為があっても被害の限定が可能です。

またLinuxはオープンソースのため、世界中の開発者がソースコードを編集することができます。脆弱性が見つかると、迅速にプログラムが修正されるのも大きな特徴です。このような仕組みにより、Linuxは多層的なセキュリティを実現しています。

代表的な脆弱性とその仕組み

Linuxで発見された重大な脆弱性としては、「Shellshock」や「Dirty COW」があります。「Shellshock(シェルショック)」は、bashというシェルに存在する脆弱性で、細工された文字列によって不正なコマンドが実行されてしまう問題です。「Dirty COW」は、メモリの書き込み保護の不備を突き、通常なら書き換えできない領域を変更できてしまう脆弱性となります。

これらの脆弱性は、権限の解除や外部からの侵入を可能にし、企業の情報資産を危険にさらす要因となるため、脆弱性への対策は重要といえるでしょう。

攻撃者が狙う攻撃パターンとその影響

攻撃者は、既知の脆弱性を利用してLinuxシステムに侵入しようとします。例えば、「未更新のパッケージを利用して権限を奪う」「SSHの設定不備を突いて侵入する」「Webサーバーを経由してマルウェアを送り込む」といった手口です。

これらの攻撃は、一度成功するとネットワーク全体に波及する可能性があり、個人情報や業務データの漏洩にもつながります。脆弱性への対応を怠ると、システム自体が業務のリスク要因になってしまいます。

脆弱性管理:定期アップデートの重要性

脆弱性は時間とともに発見され、そのたびに修正版が提供されます。Linuxシステムを安全に保つためには、こうした修正を確実に取り込み、リスクを最小限に抑えることが重要です。ここでは、アップデート実施のポイントと情報確認の手順を解説します。

 

パッケージ/カーネルの定期アップデートで脆弱性を排除

Linuxは、多数のソフトウェアパッケージとカーネルで構成されています。これらの中に、セキュリティ上の問題や脆弱性が含まれる可能性はゼロではありません。

そのため「apt(Advanced Package Tool)」や「dnf(Dandified Yum)」などのパッケージ管理ツールやコマンドを使用し、定期的に更新することが必要不可欠です。

特にカーネルのアップデートは、権限の悪用や不正なアクセスにつながる深刻な問題を防ぐ重要な位置づけとなります。セキュリティリスクを最小限に抑えるため、運用中のシステムにも無理のない更新スケジュールを組んで対応することが求められます。

再起動の必要性とタイミングの見極め方

セキュリティアップデートの中には、システムの再起動が必要な場合もあります。特にカーネルや共有ライブラリの修正は、適用後にプロセスを再起動しない限り、古い状態で動作し続けてしまいます。

ただし、システムを再起動することで業務が停止してしまう可能性もあるため、停止の影響を最小限に抑える工夫が必要です。例えば、夜間の定期保守や冗長構成を活用した段階的な再起動などの方法があります。またLivepatchと呼ばれる再起動を不要にする機能を活用することで、停止の影響を排除してセキュリティを保つことが可能となります。

CVE番号とは?参照元と対策の流れ

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)番号とは、発見された脆弱性に一意の識別子を与える国際的な仕組みです。例えば、「CVE-2022-12345」のような形式で公開されており、影響範囲や対策方法が整理されています。

Linuxのシステムパッケージ提供元は、これらの情報をもとにパッチを配布し、ユーザーに通知します。脆弱性情報を収集するには、JVN(Japan Vulnerability Notes)やNVD(National Vulnerability Database)などの信頼性の高い情報源を活用するのが有効です。(※)

脆弱性の発見方法から対応までの流れを理解することで、安全性の維持を迅速に行うことが可能となります。

 

※出典:

JVN「JVN iPedia

NVD「National Vulnerability Database

 

Linux セキュリティ強化:認証とアクセス制御の強化

ユーザーの操作権限や認証方法を適切に設定することで、不正アクセスのリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、基本的な認証強化とアクセス制御の考え方と具体策を解説します。

 

強力なパスワードポリシーと2要素認証(2FA)の導入

セキュリティを強化する上で重要なのは、パスワードの運用ルールです。例えば、「英数字と記号を組み合わせた長いパスワードを使う」「一定期間ごとに変更する」「過去の使い回しを禁止する」などの対策が効果的といえるでしょう。

また、2要素認証(2FA)を取り入れることで、仮にパスワードが漏れても不正アクセスを防ぐことができます。ユーザーごとの認証強度を高めることで、システム全体のセキュリティ強化が可能です。

SSHとrootログイン禁止の設定

サーバーにリモート接続する際のセキュリティ対策として、SSHの設定が重要となります。SSH(Secure Shell)とは、暗号化通信によりネットワーク経由でほかのコンピュータを安全に操作するための方法です。パスワード認証ではなく、公開鍵方式による認証を行うため、安全性が大きく向上します。

また、もっとも権限の強いrootユーザーによる直接ログインを無効化することも効果的です。一般ユーザーでログインした後、必要な操作だけを許可する運用を基本とするのがよいでしょう。サーバーの設定ファイル「sshd_config」に制限を追加することで、対応が可能となり、意図しない侵入リスクを低減できます。

管理者権限の最小化を徹底

すべてのユーザーに管理者権限を与えてしまうと、操作ミスや内部不正による被害のリスクが高まります。そこで用いるのが「sudoコマンド」です。sudoコマンドは、必要な作業だけ一時的に管理者権限を使える仕組みで、ユーザーごとに実行可能なコマンドを細かく制御できます。

例えば、システム更新だけを許可し、ほかの操作は制限するといった設定が可能です。

SELinux/AppArmorでアクセス制御

Linuxには、通常のアクセス制御に加え、より細かく動作を制限できるセキュリティ機能が備わっています。その代表例がSELinuxとAppArmorです。ここでは、それぞれの仕組みと導入・運用のポイントを解説します。

 

SELinuxの役割とセキュリティ強化メカニズム

SELinux(Security-Enhanced Linux)は、ファイルやプロセスにラベルを付けて操作可否を厳格に制御する仕組みです。通常のアクセス権限に加えて、動作レベルで制限をかけられるため、万が一攻撃者が侵入しても被害の拡大を防ぎやすくなります。

例えば、Webサーバーが想定外のファイルにアクセスしようとした際、自動的に拒否する制御が可能です。標準搭載されているLinuxパッケージもあり、強力なセキュリティ対策として利用されています。

 

AppArmorとの違いと使い分け

AppArmorは、SELinuxと同じくアクセス制御を強化する機能ですが、制御方法に違いがあります。AppArmorでは「プロファイル」と呼ばれる設定ファイルを用いて、アプリケーションごとに動作範囲の制限を行う仕組みです。

SELinuxは対象がファイル単位ですが、AppArmorはアプリ単位で制限の設定ができるため、運用がシンプルで導入しやすい利点があります。AppArmorが初期状態で有効になっているLinuxパッケージも多くあり、社内リソースなどを考慮してSELinuxとの使い分けを考慮するのがポイントです。

実際のポリシー設定手順と運用ポイント

SELinuxでは、ファイルやプロセスにラベルを設定し、あらかじめ用意されたポリシーでアクセスの許可・拒否を管理します。「semanageコマンド」や「chconコマンド」で設定変更ができ、「audit.log」に動作記録が残る仕組みです。

AppArmorの場合は、プロファイルを作成・編集し、「aa-complainコマンド」や「aa-enforceコマンド」で適用状況を制御します。これらの機能を導入後は、定期的にログを確認し、必要に応じてポリシーを微調整することが望ましいでしょう。

Linux セキュリティ対策:システムハードニング入門

ハードニングとは、不要な機能を無効化したり、設定を見直したりして、システムをより安全な状態に調整する作業のことです。ここでは、基本的な3つの対策として、「不要な機能の削除」「ファイアウォールの設定」「起動時の保護」について解説します。

 

不要なパッケージ・サービスの削除

Linuxをインストールした直後は、使用していないアプリケーションやサービスが数多く含まれている場合があります。これらを有効にしていると攻撃対象が増えてしまうため、不要なものは積極的に削除するのが望ましいでしょう。

例えば、telnetやFTPサーバーなど古いプロトコルを使用するサービスは、近年では代替手段がある上に脆弱性も多いため、削除対象とされます。「systemctlコマンド」や「chkconfigコマンド」を用いれば、不要なサービスを停止・無効化することが可能です。

ファイアウォールの設定

Linuxでは、ネットワーク経由の攻撃を防ぐために、ファイアウォールを適切に設定することが重要です。代表的なツールとしては、パケットフィルタリングが可能な「iptables」、ファイアウォール設定が簡単な「UFW(Uncomplicated Firewall)」、ネットワークアクセスを制御する「firewalld」などがあります。

例えば、暗号化通信のSSHで使用する「ポート22」のみを許可し、それ以外は拒否する設定が可能です。設定する場合は「ufw allow sshコマンド」や「firewall-cmd –add-service=sshコマンド」を使用します。

起動時のパスワード設定で防御強化

GRUB(Grand Unified Bootloader)は、Linux起動時に実行される「OS選択」や「カーネル設定」を行うプログラムです。GRUBにパスワードを設定しておくことで、不正なユーザーが起動オプションを変更してroot権限を取得するといった危険な操作を防止できます。

設定する場合は、「grub-mkpasswd-pbkdf2コマンド」でパスワードハッシュを生成し、GRUB設定ファイルに追記して再構築する手順です。設定後に「update-grubコマンド」を実行することで反映されます。

Linux セキュリティにおけるマルウェア対策とサンドボックス

Linuxは安全性が高いといわれていますが、マルウェアによる被害はゼロではありません。安全性を高めるには、ウイルス検出やアプリケーションの隔離など、多層的な対策が重要です。ここでは実践的な3つの手法を紹介します。

 

ClamAVの導入と高度な防御

Linux向けウイルス対策ツールの中で、広く使われているのが「ClamAV(クラム・エー・ブイ)」です。ClamAVはオープンソースのアンチウイルスソフトで、メールサーバーやファイルサーバーなどのマルウェアスキャンに利用されます。特にLinuxサーバーがWindowsクライアントと連携する場合、ClamAVによるスキャンでウイルス拡散の抑止が期待できます。

また、より高度な防御を構築するには、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入が有効です。EDRは不審な挙動を検知・記録し、攻撃の兆候を早期に察知できる技術を指します。

 

システム改ざんの検知

マルウェアの中でも特に厄介なのが、システムの深部に潜む「ルートキット」と呼ばれるツール群です。root権限を奪取して、さまざまな不正行為を行うため、深刻な被害に発展します。ルートキットに対応するセキュリティツールは、「Rootkit Hunter(rkhunter)」です。Rootkit Hunterは、既知のルートキットや不審な設定をスキャンし、異常を検知することができます。

またファイルのハッシュ値をもとに改ざんを検知するツール、「AIDE(Advanced Intrusion Detection Environment)」も効果的です。インストール直後の状態と比較して、差分を検知して監視します。この両者を組み合わせることで、ファイル単位・挙動単位でのより強固な監視が可能です。

サンドボックスでアプリ分離運用

サンドボックスとは、アプリケーションの動作範囲を限定することで、万が一マルウェアが実行されても被害が広がらないようにする技術です。Linuxでは「Firejail」や「seccomp」などのセキュリティ機能が使われます。

Firejailは、ユーザー領域の制限を簡単に設定でき、特定のディレクトリやネットワーク機能を制限することで、安全な実行環境を提供します。seccompは、カーネルレベルで使えるシステムコールを制限し、より厳密な制御を可能にする方法です。アプリごとに実行環境を分離することで、システム全体の安全性を高められます。

 

Linux セキュリティ運用:ログ監視と侵入検知システム

攻撃を完全に防ぐことができない場合でも、異常の早期発見と対処によって被害を最小限に抑えられます。そのためには、日常的なログの監視と侵入検知の仕組みの運用が必要です。ここでは、ログ監視と侵入検知システムについて解説します。

 

ログ監視と分析体制

Linuxでは、システムやアプリケーションの動作状況がログファイルに記録されます。これらの情報を確認することで、不正なアクセスやシステムエラーの兆候を早期に発見可能です。

従来のように「messagesログ」や「secureログ」などのファイルを「syslog」経由で監視したり、「journalctl」ツールを使用したりします。「journalctl」では、ログを時系列に確認したり、特定のキーワードだけを抽出したりすることが可能です。ログを分析する体制を整えておくことで、問題の早期発見と対応がスムーズになります。

SSHブルートフォース攻撃対策

SSHはサーバー管理に必須の機能ですが、ログイン試行を繰り返す「ブルートフォース攻撃」に狙われやすいという弱点があります。この対策に有効なのが「Fail2Ban」ツールです。

Fail2Banは、一定回数以上ログインに失敗したIPアドレスを自動的にブロックすることで、攻撃を防止します。例えば、5回連続で失敗した場合に30分間接続を禁止する、といった設定が可能です。設定ファイルもシンプルで、導入から運用まで容易に始めることができます。

 

ファイル改ざん・侵入を検出する

HIDS(Host-based Intrusion Detection System)は、サーバー内部の異常を検知するセキュリティ機能です。ファイルや設定の変更、ユーザーの操作履歴などを監視し、通常とは異なる動きを素早く検出できます。

HIDSの代表的なツールには「AIDE」や「OSSEC」があり、改ざんされたファイルの検出や不審なログインの通知が可能です。HIDSはシステム内部の異常を検知できるため、ネットワーク外部の対策と併せて導入することで、より強固な防御体制の構築が可能です。

セキュリティサポート体制の提供(Wind River Studio Linux Services)

Linuxシステムのセキュリティは、導入後も継続的な対応が不可欠です。弊社のWind River Studio Linux Servicesでは、脆弱性への迅速な対応、セキュリティパッチの提供、長期サポート(LTS)など、企業向けの包括的な支援を行っています。

特にCVE(共通脆弱性識別子)対応をはじめ、業界標準のセキュリティ要件に準拠した更新を継続的に配信できる体制が整っており、製品のライフサイクル全体にわたってリスク管理が可能です。また、カスタマイズされたポリシーの策定や運用アドバイスも実施しているため、セキュリティに不安を抱える技術担当者にとって心強いサービスとなります。

まとめ

Linuxはオープンソースで信頼性が高い一方、脆弱性への対策は必須です。この記事では、セキュリティ構造の基本から、過去の重大な脆弱性や攻撃手法、定期的なアップデート、CVE対応の重要性などを網羅的に解説しました。

セキュリティ対策としては、認証とアクセス制御、SELinuxやAppArmorによる高精度な制限設定、マルウェア対策やサンドボックスの活用などが有効です。またログ監視や侵入検知システム、SSH攻撃対策などの運用面まで踏み込んだ、包括的なセキュリティ体制の構築が重要となります。

弊社のWind River Studio Linux Servicesを利用することで、システム全体のセキュリティを継続的に維持することが可能です。

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[2025年07月09日 時点]

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