ミッションクリティカルシステムにおけるRustのメモリ管理
AdaCore
Teach Paper
ポインタに関するエラーは、何十年にもわたってソフトウェア開発者を悩ませてきました。Rustの革新的なアプローチは、ポインタを安全かつ効率的に扱えるようにします。
ポインタはコンピューティングの黎明期からプログラミング言語の基本要素であり、次の2つの目的で使われてきました。
- 間接参照(Indirection):データ値をプログラム内でコピーせずに共有する手段。これは暗黙的(たとえば「参照渡し」のパラメータ)でも、明示的(たとえばCにおける「&x」や「*p」などの構文)でも可能です。
- 動的メモリ割り当て(Dynamic Allocation):実行時にサイズが増減するデータ構造(リンクリスト、ツリー、グラフなど)を構築・操作するための手段。
ただ、強力な機能にはリスクも伴い、ポインタは、安全性やパフォーマンスを損なう要因になり得ます。本稿では、ポインタに起因する課題を掘り下げ、Rustがどのように対処しているかを解説します。Rustは、ポインタの取り扱いにおいて従来の言語とは異なる設計思想を採用しています。その結果、メモリの安全性が向上し、ポインタ関連のバグを早期に発見できるだけでなく、汎用的なデータ構造を表現する柔軟性と高いパフォーマンスも両立しています。