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SBOMフォーマットの役割|最適な形式を判断するための重要ポイント

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ソフトウェアに含まれる部品やライセンス、脆弱性を一覧化して「見える化」する仕組みがSBOM(Software Bill of Materials)です。SBOMには、複数のフォーマットが存在しており、どれを選ぶべきか悩んでいる方も少なくないでしょう。

この記事では、国際的なガイドラインや実務事例を踏まえながら、主要フォーマットの特徴と得意分野を整理します。また、目的別の選び方や、自動生成ツールとの連携、運用のベストプラクティスなども解説しています。

 

SBOMフォーマットの基礎知識

SBOMフォーマットは、ソフトウェア部品の情報を共通の「書き方」にそろえるための仕組みです。ここでは、フォーマットが果たす役割と、SPDX/SPDX LITE/CycloneDX/SWIDタグの違い、求められる背景を解説します。

 

SBOMフォーマットの役割

SBOMフォーマットの役割は、ソフトウェア部品の情報を機械が扱いやすい形に整え、組織やツールをまたいでも同じ意味で読めるようにすることです。

例えば、Excelで自由に作った部品表は、人間には分かりやすくても、ツールによる自動解析や他社との連携には向きません。そこで、どの項目を、どの程度の粒度で、どのような形式で記録するのかを定めた標準フォーマットが重要となります。標準フォーマットを使うことで、ライセンス管理や脆弱性管理を効率化することが可能です。

経済産業省の資料では、SBOMは「機械処理可能な形式」で提供することが前提とされています。(※)

このように、SBOMフォーマットは自動生成や継続的なモニタリングを支える基盤として重要です。

※出典:経済産業省「ソフトウェア管理に向けた SBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引 ver 2.0」(Page 6)

 

主要フォーマット(SPDX・SPDX LITE・CycloneDX・SWIDタグ)の定義

SBOMは、「ソフトウェアの材料表」と考えると、分かりやすいでしょう。材料表の書き方にはいくつかの決まった型があり、代表的なものが、SPDX、SPDX LITE、CycloneDX、SWIDタグです。それぞれ、得意分野や使われ方が異なります。

フォーマット 概要 向いている用途
SPDX Linux Foundationが定めた詳細なSBOM仕様。ライセンスや由来情報を細かく表現できる。 グローバル展開や詳細なOSSコンプライアンス管理
SPDX LITE SPDXから最低限の項目だけを抜き出した日本の実務に適合するよう整理された簡易版。Excelにて扱いやすい形。 組織間のライセンス情報授受、手動でのSBOM共有の出発点
CycloneDX OWASPプロジェクト(Webセキュリティ向上を目指す国際的な非営利団体)によるフォーマット。

依存関係や脆弱性などのセキュリティ情報に強い。

脆弱性管理やセキュリティツールとの連携を重視する場面
SWIDタグ インストール済みソフトウェアを識別するための国際規格(XML形式のタグ)。 クライアント/サーバ型資産管理や構成管理との連携
 

SBOMには複数のフォーマットがあり、得られる情報の粒度や得意とする用途が変わります。日本企業では、既存のExcel台帳と親和性の高いSPDX LITEを入り口として採用し、その後に自動生成されたSPDXやCycloneDXと組み合わせていく進め方も増えています。

自社が「ライセンスをきちんと管理したいのか」「脆弱性を追跡したいのか」「資産管理を強化したいのか」といった目的を整理した上で、最適なものを導入していく方法がよいでしょう。

 

SBOMフォーマットが必要とされる背景

現在のソフトウェア開発では、メーカーがすべて製作しているわけではなく、OSS(オープンソースソフトウェア)や外部ライブラリを組み合わせて作っています。そのため、「何がどこに使われているのか」が見えにくくなり、トラブル時に影響範囲を追跡するのが難しくなっています。

背景と、SBOMが担う役割は下表のとおりです。

背景要因 具体的な状況 SBOMフォーマットの役割
OSS・外部ライブラリの急増 1製品に数十~数百の部品が含まれ、台帳だけでは把握しきれない。 コンポーネント情報を統一形式で整理し、抜け漏れを防ぐ。
サプライチェーン攻撃の増加 Log4jのような深刻な脆弱性が見つかった際、影響製品の特定に時間がかかる。(※) 標準化されたSBOMから、影響する製品を素早く洗い出す。
規制・ガイドラインの強化 米国大統領令14028やNIST、NTIA、経済産業省の手引きでSBOMが推奨されている。(※) 調達要件や監査に応えられる説明材料として機能する。
 

こうした背景から、SBOMは必要な資料として注目されています。特に、重大な脆弱性が公表された際に、どの製品に影響があるのかを迅速に把握することは、インシデント対応のスピードに大きく関係します。

また、海外の政府調達や大手顧客との取引では、SBOMの提出が条件となるケースも増えつつあります。

標準フォーマットでSBOMを整備しておけば、社内のセキュリティ対策だけでなく、取引先・監査機関に対して分かりやすく説明が可能となるでしょう。そのため、SBOMフォーマットは技術だけでなく、ビジネス上の信頼を支える土台になります。

※出典:

NIST(米国国立標準技術研究所)「大統領令14028号、国家のサイバーセキュリティの向上

経済産業省「ソフトウェア管理に向けた SBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引 ver 2.0

警察庁「Javaライブラリ「Apache Log4j」の脆弱性(CVE-2021-44228)を標的とした攻撃の観測について

 

SBOMフォーマットの違い

SBOMフォーマットは、それぞれ得意分野や運用しやすい場面が異なります。ここでは、SPDXとその簡易プロファイルであるSPDX LITE、CycloneDX、SWIDタグの特徴を整理し、「どの場面でどれを選ぶか」をイメージしやすいように解説します。

 

SPDXおよびSPDX LITEの特徴と得意領域

ソフトウェアの部品情報を正確に管理したい組織では、記録形式の違いを理解することが重要です。SPDXは詳細な情報を扱う標準仕様で、SPDX LITEは日本の実務に合わせて必要最小限の項目に絞った軽量版です。用途や体制に応じて使い分けることで、運用負荷を抑えながら適切に管理できます。

以下に、SPDXとSPDX LITEの特徴をまとめました。

項目 SPDX SPDX LITE
情報量 非常に多い(詳細管理向け) 必要最低限(日本組織間の実務向け)
運用方法 自動生成ツールと相性がよい 手動作成しやすい(Excel対応)
向いている場面 大規模OSS管理・コンプライアンス対応 中小規模・段階的導入・台帳運用
 

SPDXは、ライセンス名の統一や著作権表記など、多くの情報を一つの形式にまとめられるため、国際的な取引や厳密なコンプライアンス対応が求められるケースに向いています。

一方で、最初からSPDXを使うと項目数の多さが負担になる場合も考えられるでしょう。SPDX LITEはこの負担を減らしながら国内組織間で必要な情報をやり取りできるように最適化された書式です。

既存の台帳やスプレッドシートとも組み合わせやすく、段階的にSBOMを導入したい組織に適しています。組織の規模と目的に応じて両者を使い分けることで、無理のないSBOM運用が実現可能です。

※出典:

Linux Foundation「SPDX

OpenChain日本ワークグループ「SPDX LITE

 

CycloneDXの特徴と得意領域

CycloneDXは、ソフトウェアの安全性を確保するために必要な情報を整理しやすい形式です。部品同士のつながりや、すでに報告されている脆弱性を扱いやすく設計されているため、問題発生時の影響範囲を素早く把握できます。

セキュリティ管理に重点を置く組織で効果を発揮するでしょう。主な特徴は、次のとおりです。

項目 CycloneDX 特徴
得意分野 依存関係・脆弱性管理 セキュリティ観点を強化できる
対象範囲 ソフトウェア・クラウド・サービス サプライチェーン全体をカバー
ツール連携 多くの生成ツールが対応 スキャン結果と結びつけやすい
 

CycloneDXは、依存関係の把握と脆弱性管理に強みを持つ形式です。どのコンポーネントがどの製品に影響するのかを追跡しやすい仕組みが備わっており、セキュリティチームが利用するツールとも連携しやすく設計されています。

クラウド構成やサービスも扱えるため、現代の複雑なシステム構成にも対応が可能です。脆弱性の早期発見と影響分析を重視する組織にとって、CycloneDXは有力な選択肢となります。

※出典:OWASP「CycloneDX

 

SWIDタグの特徴と得意領域

SWIDタグは、PCやサーバに「どのソフトがインストールされているか」を正確に把握するための仕組みです。製品名・バージョン・提供元などの情報を統一形式で記録できるため、資産管理やライセンス管理を効率化したい組織で活用されています。

SWIDタグの主な特徴は、次のとおりです。

SWIDタグの特徴 活用領域
インストール済み製品を正確に識別 IT資産管理、構成管理
国際規格(ISO/IEC 19770-2)に準拠(※) 監査やセキュリティ運用
自動収集ツールと相性がよい 大規模環境の棚卸
 

SWIDタグは、実際に端末へインストールされた製品を正確に識別できる点が大きな強みです。NIST(米国国立標準技術研究所)が推奨基盤として位置づけていることもあり、資産管理やパッチ適用管理の精度を高めたい組織で採用が進んでいます。

手動による台帳管理では限界が生じやすい大規模環境でも、SWIDタグを利用することで自動的に構成情報を収集でき、SBOMとの併用でさらに透明性を高めることが可能です。ソフトウェア保有状況を正確に管理したい組織に適した手法といえます。

※出典:

NIST(米国国立標準技術研究所)「ソフトウェア識別 (SWID) タグ付け

ISO「ISO/IEC 19770-2:2015

 

SBOMフォーマットの選び方

SBOMフォーマットは、目的に応じて、向き不向きが異なります。ここでは、ライセンス管理、脆弱性・依存関係管理、サプライチェーン要求という3つの観点から選び方を解説します。

 

ライセンス管理を重視する場合の選択肢

ソフトウェアに含まれる部品ごとのライセンス情報を正確に把握したい場合、記録できる項目の多さが重要になります。特に組織が外部とやり取りする際は、著作権表記やライセンス条件を統一的に扱える形式が重要です。そのため、まず候補になるのがSPDXとなります。

SPDXの特徴は次のとおりです。

 

  • ライセンス名を統一的に扱える仕組みが整っている
  • 著作権表記や由来情報など詳細な項目を記録できる
  • 国際的な標準として認知されており、取引との整合性を取りやすい
  • 帳票や社内台帳とのひも付けがしやすく運用に組み込みやすい
  • 簡易運用にはSPDX LITEを併用して負荷を調整できる

 

ライセンス管理では、どの部品がどの条件で利用できるかを正確に示す必要があります。SPDXは、こうした要件に応えるための項目がそろっており、グローバルなレベルで実務に使われている点が大きな強みです。

すべてを詳細に管理するのが難しい場合でも、SPDX LITEを組み合わせることで運用負荷を抑えつつ、必要な情報だけを正確に整理できます。

まずは自社がどこまで確認したいのかを明確にし、それに合わせてSPDXを中心に構成すると管理しやすくなります。

※出典:

Linux Foundation「SPDX

OpenChain日本ワークグループ「SPDX LITE

 

脆弱性管理・依存関係管理を重視する場合の選択肢

どの部品がどの部品に依存しているか、また既知の脆弱性がどこに影響するのかを把握したい場合は、依存関係を扱いやすい形式が最適です。脆弱性データベースやスキャンツールと連携しやすいことも重要で、この条件を満たす形式としてCycloneDXが選ばれることが増えています。

CycloneDXの特徴としては、次のとおりです。

 

  • 依存関係を標準化された形で表現できる
  • 既知の脆弱性情報との関連づけがしやすい
  • セキュリティツールとの連携事例が多く実務に取り入れやすい
  • ソフトウェアに限らず、クラウド構成やサービスも扱える
  • 影響範囲の特定がしやすく調査時間の短縮につながる

 

CycloneDXは、多くのセキュリティツールで利用できる形式として広く採用されています。例えば、SBOMを取り込んで脆弱性を調べるツールや、依存関係を分析するCIサービスと組み合わせると、問題のある部品の特定が自動化されます。

この仕組みにより、影響範囲の把握が効率的になるといえるでしょう。

※出典:OWASP「CycloneDX

 

サプライチェーン要求・規制対応を重視する場合の選択肢

取引先や行政機関からSBOMの提出を求められるケースが増えています。このような状況では、自社だけでなく相手の要件に適合する形式を選ぶことが必要です。特に国際的なガイドラインでは、複数の標準形式が前提となっています。

主な要求としては、次のとおりです。

 

  • NIST(米国国立標準技術研究所)・NTIA(米国商務省電気通信情報局)の最小要素では複数形式が標準として扱われている
  • CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)が調達要件にSBOMを入れ始めている
  • 日本でも国際機関と連携したSBOM普及が進んでいる
  • 形式を固定せず複数フォーマットを扱える体制が必要
  • ほかの形式へ変換できる運用が将来の監査にも有利になる

 

規制対応やサプライチェーン要求では、自社だけで形式を決めるのではなく、相手が何を前提にしているかを踏まえて選択することが不可欠です。国際的な文書では、SPDX・CycloneDX・SWIDのいずれも標準として扱われており、一つの形式だけに依存すると将来的な要件変更に対応しづらくなります。

複数形式の扱いを前提にし、必要に応じて変換できる運用を整えることで、取引先や監査機関とのコミュニケーションがスムーズになるでしょう。長期的な視点で見ても、柔軟な運用体制が組織のリスク低減につながります。

※出典:

NIST(米国国立標準技術研究所)「大統領令14028号、国家のサイバーセキュリティの向上

CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)「2025 ソフトウェア部品表(SBOM)の最小要素

経済産業省「サイバーセキュリティのためのソフトウェア部品表(SBOM)の共通ビジョンに関する国際ガイダンスに国家サイバーセキュリティオフィス(NCO)と共同で署名

 

SBOMフォーマットの作り方

SBOMを継続的に活用するには、手動作成と自動生成をうまく組み合わせ、機械可読なフォーマットで管理することが重要です。ここでは、SPDX LITEを使った手動作成と、自動生成・フォーマット変換のポイントを解説します。

 

手動作成を前提としたSPDX LITEの活用ポイント

SPDX LITEは、最低限の項目だけをまとめたシンプルな書式で、Excelを使って手作業で整理しやすい点が特徴です。自動生成ツールが整っていない環境でも扱いやすく、既存の部品表や納品情報をそのまま反映しやすいフォーマットとして、日本の組織でも採用例が増えています。

活用のポイントとしては、次のとおりです。

 

  • 必要最低限の情報だけに絞られているため、手作業でも作成しやすい
  • Excelで記入・更新でき、既存台帳との整合を取りやすい
  • 日本企業の実務に合うように設計され、取引先間でも扱いやすい
  • ライセンス情報の漏れや記載漏れを防ぐ「型」として機能する
  • 将来フルSPDXへ移行するときの土台として再利用しやすい

 

SPDX LITEは、いきなり本格的な自動生成に踏み切れない組織でも無理なく始められる形式です。まずは手動で必要項目を整え、運用が軌道に乗ってからフルSPDXや自動化へつなげるという段階的アプローチを取りやすい点が強みです。

小規模チームでも導入しやすい現実的な選択肢といえます。

※出典:

Linux Foundation「SPDX

OpenChain日本ワークグループ「SPDX LITE

 

CI/CDパイプラインへのSBOM自動生成を組み込む

SBOMを常に最新の状態に保つには、開発やリリースのタイミングで自動生成する仕組みを組み込むことが効果的です。CI/CDパイプライン(ソフトウェア開発→テスト→リリースまでを自動で流れる仕組み)の中で処理を自動化すれば、更新漏れを防ぎながら、依存関係や脆弱性の変化を継続的に把握できます。

結果として、管理負荷を大幅に減らせるようになります。自動生成の特徴は次のとおりです。

 

  • ビルド時にSBOMが自動生成され、常に最新の状態を維持できる
  • 人手依存を減らし、情報の抜け漏れや記入ミスを防ぎやすい
  • 脆弱性チェックなど複数の自動化ツールと連携しやすい
  • 生成されたSBOMをリポジトリや成果物として一元管理できる
  • 手動形式(SPDX LITE)と併用する運用にも取り入れやすい

 

CI/CDパイプラインでのSBOM自動生成は、日々変化する依存関係や脆弱性への対応をスムーズにします。手動では追いきれない部分を機械に任せることで、品質を保ちながら運用負荷を抑えることが可能です。

SPDX LITEとの併用も可能なため、組織の成熟度に合わせて柔軟に取り入れられます。

※出典:

Linux Foundation「SPDX

OpenChain日本ワークグループ「SPDX LITE

 

フォーマット変換と統合管理の方法

組織や取引先ごとに求められるSBOM形式が異なる場合は、一度情報を集約し、必要に応じて形式を切り替えられる仕組みが役立ちます。専用ツールを使えば、自動生成した形式を別の形式へ変換でき、複数のフォーマットが混在する環境でも整理が可能です。

フォーマット変換が可能になることで、得られるメリットは次のとおりです。

 

  • 一度集約したSBOMを別形式へ変換でき、取引先ごとに対応しやすい
  • 複数形式を受け付けて統合管理できるツールを活用できる
  • 異なる開発チームや外部パートナーとの情報差を吸収しやすい
  • 手動形式(SPDX LITE)は項目マッピングで他形式と併用できる
  • 将来の調達要求や監査に備え、柔軟な対応体制をつくれる

 

フォーマット変換や統合管理の仕組みを整えておくことで、組織内外でSBOMの形式がそろわなくても対応しやすくなります。自動生成形式とSPDX LITEの双方を無理なく扱える体制をつくれば、現場の実態に合った運用を維持しながら、取引先や規制要求にも確実に応えられるようになるでしょう。

 

SBOMフォーマット運用のベストプラクティス

SBOMは、継続運用の仕組みに乗せることが重要です。ここでは、SBOMを自社で活用するための仕組みについて解説します。

 

依存関係・脆弱性の継続的モニタリングを仕組み化

多くのソフトウェアは、さまざまな部品を組み合わせて作られており、弱点がどこに潜んでいるのかをつかむのが難しいです。SBOMを活用し、専用ツールで自動的に監視する仕組みを整えることで、素早く対応が可能となります。

例えば、次の運用項目を仕組み化するのがよいでしょう。

運用項目 内容 効果
SBOMの取り込み 専用ツールに登録して情報を整理 管理対象を全体で把握できる
依存関係の可視化 製品と部品のつながりを表示 影響範囲の判断が容易になる
脆弱性データとの照合 公開情報と自動で突き合わせる 新しい脆弱性に即時対応できる
 

依存関係や脆弱性を把握する作業は、人の目だけでは追いきれない場面が多くあります。SBOMを専用ツールに連携させることで、公開された脆弱性にどの製品が関係するかを自動で確認でき、優先順位を付けた対応が可能です。

SBOMを単なる一覧ではなく「継続的に更新される情報源」として扱うことで、セキュリティ対策の精度が向上し、チーム全体の負担も軽減できます。

 

SBOM提出要求に備えて更新フローを整備

顧客や規制当局からSBOMの提示を求められるケースが増えています。慌てず対応するには、日々の変更を確実にSBOMへ反映できる仕組みを事前に整えておくことが重要です。

次のような更新フローがよいでしょう。

項目 内容 期待できる効果
自動更新 バージョン更新時にSBOMも作成 情報の抜け漏れ防止
保管ルール 保存場所・担当者を明確化 共有と検索が容易
提出手順 提供形式・署名方法を定義 対外対応の品質向上
 

SBOMは作って終わりではなく、製品の更新に合わせて正確に保つ必要があります。更新フローをあらかじめ決めておけば、提出依頼があっても迷わず対応でき、監査や調達プロセスでも信頼される資料として扱ってもらえます。

特に「誰が」「いつ」「どの形式で」作るかを明確にすることで、組織の中で共通した運用が実現可能です。継続的な更新を前提に仕組みを整えることが、SBOMを価値ある情報として保ち続けるカギになります。

 

社内の標準ルールとしてフォーマット運用を定着

SBOMを社内で活用するには、プロジェクトごとに形式が異なる状態を避け、共通ルールを決めることが重要です。統一されたやり方があるほど品質が安定し、関係者間で共有しやすくなるでしょう。

運用のポイントは次のとおりです。

項目 目的
フォーマットを統一 表記ゆれを無くし統一する
生成・保管のタイミング 更新漏れを防ぎ管理を簡単にする
 

SBOMの形式や作成方法がチームごとに異なると、管理の負担が増え、取引先への説明も難しくなります。最初に共通ルールを定めておけば、どの担当者でも同じ品質のSBOMを作成できるようになり、組織全体の成熟度を高めることが可能です。

また、小さな成功体験を積み重ねながら改善していけば、自然と運用が根付き、SBOMが日常的に活用される環境が整います。

 

SBOMフォーマットの国際標準動向

SBOMは、NIST・CISAなどの政府機関や、SPDX・CycloneDXといった標準化団体の取組やガイドラインによって方向性が形づくられています。ここでは、その最新動向を整理し、今後の方針検討に役立つ視点を解説します。

 

NISTのSBOM要件とフォーマットの位置づけ

NIST(米国国立標準技術研究所)は、米国大統領令14028に基づくソフトウェアサプライチェーン対策の中で、SBOMを重要な要素として扱っています。NISTの「Software Security in Supply Chains」では、SBOMをベンダーリスク評価やOSS管理、脆弱性管理と並ぶ基盤的な仕組みとして位置づけています。

一方で、特定フォーマットだけを指定するのではなく、「進化する標準やツール」の一つとして、機械可読なSBOMの活用を推奨するスタンスとなっています。NISTのガイダンスを土台にしながら、標準フォーマットに沿ってSBOMを整備しておくことで、海外の調達要件や将来の規制にも対応しやすくなります。

※出典:NIST(米国国立標準技術研究所)「大統領令14028号、国家のサイバーセキュリティの向上

 

CISAのSBOM要件

CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)は、SBOMの「Minimum Elements(最小要素)」を定義し、2025年には改定版のドラフトも公表しています。2025年版では、従来のNTIA2021版を引き継ぎつつ、「データフィールド」「自動化支援」「運用プロセス」の3つの観点から、より具体的な要求事項が整理されています。

例えば、コンポーネント名やバージョンだけでなく、サプライヤ情報や依存関係の表現、機械可読な形式での配布などが求められています。

また、2025年時点ではドラフトであり、パブリックコメントを通じて国際的な調整を進めていることも明示されています。Minimum Elementsは、現在のベストプラクティスをまとめた指針と位置づけられており、製品輸出やグローバル展開を想定している場合は、これを念頭に置いてSBOM項目やフォーマットを設計しておくことが重要です。

※出典:

CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)「2025 ソフトウェア部品表(SBOM)の最小要素

CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)「ソフトウェア部品表(SBOM)

 

SPDX・CycloneDXの最新アップデート

SPDXとCycloneDXの動向を押さえることは、今後のフォーマット選定に直結します。SPDXはLinux Foundationが主導する標準で、仕様はISO/IEC 5962として国際規格化されているものです。(※)

2024年にはSPDX 3.0および3.0.1が公開され、セキュリティやAIなど幅広いユースケースに対応できるようモデル拡張が進んでいます。(※)

一方、CycloneDXはOWASPプロジェクトとして進化を続け、v1.6が2024年に公開されました。このバージョンでは、暗号鍵やアルゴリズムを管理する「Cryptographic BOM(CBOM)」や「アテステーション(CDXA)」など、セキュリティ運用を意識した機能が追加されました。(※)

また、CycloneDX v1.6は、Ecma InternationalによりECMA-424として標準化されており、2025年にはv1.7発表と第二版標準化の予定も公表されています。(※)

このような国際標準化の流れを踏まえると、SPDXとCycloneDXはいずれも長期的に安心して採用しやすいフォーマットといえます。

※出典:

Linux Foundation「SPDX

spdx/spdx-spec「パッチリリース 3.0.1

CycloneDX「CycloneDX v1.6 リリース

ecma「ECMA-424

CycloneDX「CycloneDX v1.7

 

まとめ

今回は、SBOMフォーマット(SPDX/SPDX LITE/CycloneDX/SWIDタグ)の役割と違いを整理し、目的に応じた選び方と運用の考え方を解説しました。

ライセンス管理・脆弱性管理・資産管理といった観点から得意領域を比較し、SPDX LITEによる手動作成とCI/CDでの自動生成を組み合わせるアプローチも効果的です。

継続的なモニタリングや提出フローの整備、NIST・CISAなど国際ガイドラインの動向を踏まえ、将来の調達要件や監査にも対応しやすいSBOM体制をつくっていくことが重要となります。

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