SMB Over QUIC
~インタビュー記事ご紹介~
Microsoft SMB Over QUIC
【ゲームチェンジャー】
Microsoft Windows ServerエンジニアリンググループのプリンシパルプログラムマネージャーであるNed Pyle氏は、SMBに「ゲームチェンジャー」がやってくることを示唆しました。それは、SMB over QUICです。
【QUICの紹介】
QUICは、Chromeの下で動作しているインターネットプロトコルです(Microsoft Edge、Firefox、Safariでもサポートされています)。
QUICはUDPを利用しているため、プロトコルの遅延が非常に少なく、TCPに伴うデータ取得の遅延をカットすることができます。
YouTubeを使った初期の実験では、同一条件でのリバッファリングが30%減少したと報告されています(出典1)。
QUICを使えば、SMBプロトコルを携帯電話の仮想プライベートネットワークのオプションのようにふるまうことができ、TCP/IPやRDMAの代わりとすることができます(出典2)。
携帯電話の場合、QUICには接続マイグレーション機能が組み込まれています。例えば、退社時に職場のWi-Fi周辺にある駐車場に入るなど、ネットワークエリアを移動しても、
ユーザーは現在のページやウェブサイトを中断することなく、いつものように閲覧することができます。QUICはこの「駐車場」の問題を解決します(出典3)。
QUICは、Webアプリケーションを高速化します。特に動画や検索を高速化します。
このプロトコルは、サーバーへの接続に必要なラウンドトリップ、ハンドシェイク及びパケットロスを減らし、暗号化とUDPトランスポート層によって動作します。
報告によると、QUICはコンテンツのダウンロードを100〜200%高速化できるそうです(出展4)。
Ned Pyle氏は、「SMB over QUICは、Windows、Windows Server、Azure Filesに登場するゲームチェンジャーです」と書いています。今日の世界では、モバイルユーザーがSMBファイル共有にアクセスするには、高価で複雑なVPNが必要です。また、Azure Filesを利用しようとする部署では、ISPがポート445をブロックしていることがよくあります。ユーザーのデスクレス化が進み、企業はこれまで以上にハイブリッド・コンピューティングを行うようになっているにもかかわらず、SMBはそれに追いついていません。
QUICは現在、Windows 10のEdgeブラウザやその他のアプリに導入されています。Ned Pyle氏の投稿によると、QUICは、SMBで暗号化が行われていない場合でも、SMBのペイロードを暗号化によって保護するトンネルを作ることができるトランスポートプロトコルのオプションになるそうです。
Ned Pyle氏がQUICを実装する理由として挙げているのは主に2つあります。1つ目は、QUICが “中間者攻撃”を防ぐことでセキュリティを強化していること。2つ目は、QUICは、必須ではないが、より高速なオプションを提供すること。つまり、TCP/RDMAプロトコルとQUICの両方を試し、より高速な方を選ぶことができるということです(出典5)。
QUIC上で動作するHTTP/3が世界的に採用されるようになれば、現在のインターネットはより高速でスムーズに動作するようになると考えられます。
※QUICの歴史と開発の詳細については、WikipediaのQUICに関する項目を参照のこと(出典6)。
【QUICの詳細】
Mozilla Firefoxは現在、開発者が新機能をテストするためのMozillaの実験的なチャンネルであるナイトリービルドで、HTTP/3のサポートをすでに開始しています。これらのビルドは、開発者向けとなり、クラッシュや誤動作の原因となる安定性の問題に関連しています
QUICを5Gのパケットコアとして展開することができたのは、IETFと3GPPの密な協力関係があったからです(出典7)。QUICの高速なコネクションレス属性、コネクションマイグレーション、マルチプレクシング、優れた輻輳制御、セキュアなTLS 1.3トンネリングなどにより、QUICは従来のTCP + TLSプロトコルよりも好まれる通信方法となっています(出典8)。
5Gの登場はクラウドゲーム業界にも追い風となるでしょう。QUICの低い接続遅延は、今日のクラウドゲーム開発の主なボトルネックとなっているゲームの反応時間やコマ落ちの改善に有益であることが証明されるでしょう。2019年第4四半期に開始されたGoogleのStadiaは、Shadow、GeForce Now、Microsoft Xcloud、Playstation Nowなどの同様のサービスの開発を後押ししています(出典9)。
物理的なメディアという従来のディストリビューションシステムが予測不可能で不安定な中、ゲーム業界の勢いは、オンラインのクラウドサブスクリプションサービスへと向かうのは妥当というしかありません。企業の立場からは一定の収入源となるからです。
また、5GはIoT機器の接続性を向上させ、情報の流れを速くすることで、AIの開発・実装を促進します。このような実装がなされたデバイスは、自律走行、遠隔医療、航空業界などのリスクの高い状況で重要となる、デバイス間の相互接続及び、接続の維持が可能になります。
QUICは、年平均成長率52.94%で成長し、2027年末には約230億USドルに達すると予想されています。より高速でより安定したインターネットサービスへの需要が高まる中、QUICは、安全で柔軟性があり、より迅速なネットワークインフラの未来へ進むための方法となるでしょう。
Google、Microsoft、Facebook、Alibaba、Mozillaなどの企業がすでにQUICを採用しており、このような開発状況では、QUICが業界標準となるのは時間の問題です(出典10)。
※本資料は、Visuality Systemsの記事を意訳したものです。正確な内容については、原文をご参照下さい。
■原文
https://visualitynq.com/resources/articles/smb-over-quic/
■ドコモ、通信障害の原因を発表 IoT関連の工事で信号量が増大
https://japanese.engadget.com/docomo-235023108.html
■出典一覧
1 https://techcrunch.com/2015/04/18/google-wants-to-speed-up-the-web-with-its-quic-protocol/
3 https://www.fastly.com/blog/modernizing-the-internet-with-http3-and-quic
4 https://www.networkstraining.com/what-is-quic-protocol/
6 https://en.wikipedia.org/wiki/QUIC
7 https://www.ericsson.com/en/blog/2018/6/quic–a-vehicle-for-transport-protocol-evolution
8 https://blog.3g4g.co.uk/2018/02/quic-possibly-in-5g-3gpp-release-16.html
9 https://en.wikipedia.org/wiki/Google_Stadia
10 Maia research analysis